社会起業と社会企業。稼ぐ事と社会貢献について。
2018年4月20日ビジネスモデル
社会起業とは
社会起業という言葉の定義は決まっておらず、いろいろな文脈で使われています。
大まかに言えば社会問題を解決することを目的とし起業する、という意味でしょうか。
社会問題の解決するための起業というと、最近その数が多くなってきた印象もありますが、
社会事業やボランティア、NPO法人の設立という形での社会貢献活動は以前から行われてきました。
特に社会福祉の面ではいろいろな取り組みがされてきたと思います。
政府も企業も社会のニーズをくみ取るために活動していのですが、対応しきれない部分もたくさんあります。
大局的にいえば、社会の変化に伴い複雑化するニーズに対応しきれない政治や、
既存の企業の社会貢献事業から漏れる人が多くなったために、社会起業という形が注目されてきました。
一方、個々の社会起業家としては、補助金や助成金を財源とし、行政と強力しながら活動することもあるでしょう。
社会起業という言葉を使うときに、どういった法人形態をとるのか、あるいは個人事業として起業するのか、という決まりはないですが、
事業の継続性のためにも利潤を上げ続けるというビジネスの側面が必要なことは確かです。
行政の下請け化を避け独自の事業をするためには、安定した独自財源が必要な一方、
社会問題の解決を目的として起業する以上、利益ばかりを追い求めると方向性が変わってきてしまうでしょう。
社会起業と社会(的)企業
社会起業と社会(的)企業の違いはなんでしょうか。
読んで字のごとくですが、社会起業は起業の一つです。
社会企業は、「企てる」という字が入っているように、事業を起こすだけでなく、
ビジネスモデルを通じて社会問題の解決を実行する全体を意味します。
実際にはそこまで厳密に区別して使われていないことも多いので、あまり意識しすぎる必要はないかもしれませんが、
従来非営利的に活動してきた部門にビジネスの要素を取り入れ、人材の確保や安定的な財源など、継続性を確保したのが社会企業です。
今までは、社会貢献・非営利と言う言葉からは、ボランティアという言葉が連想されていました。
私自身も今まで、
・子どもとの野外活動、キャンプ活動
・阪神大震災支援
・障害者の自立支援
などのボランティア活動に関わってきました。
そこでの経験で得たものは非常に大きく一生の宝ですので、多くの方に積極的にボランティア活動に、取り組んで欲しいと思っています。
しかし、まずその母体となる団体がしっかりと収益を上げていなければ、ボランティア活動をすることすらできません。
「起業して日本の教育問題を解決したい」
「途上国で起業して貧困を解決したい」
「自分の経験を生かしてうつ問題を解決したい」
しかし、こういう「想い」も続けなければ価値はありません。
私が大学時代初めて関わったボランティア団体は、非常にすばらしい団体でした。
私を指導してくれるスタッフや先輩からの学びもたくさんあり、やりがいもあり、その活動にのめり込みました。
しかし、残念ながら母体の団体が活動停止したために、その活動が続けられませんでした。
その理由は、サービス利用者が減り赤字が続いていたからです。
利益を出すことを忘れずに
いくら素晴らしい活動でも、集客できず売り上げを上げることができなければ、続けることができません。
夢や志だけでは起業しても成功しません。
「儲け」という言葉に抵抗がある人もいるかもしれませんが、「活動資金」がなければ事業が継続することができません。
私は団体が活動停止に追い込まれるという体験をしたからこそ、社会貢献につながる素晴らしい事業も
きちんと利益を出して継続できるビジネスモデルやマーケティングプランが必要と考えています。
社会企業とグローバル化
社会企業、というとしばしば地域の問題を解決したり、コミュニティビジネスとして機能するということがいわれます。
一方、経済のグローバル化とそれによるいろいろな問題は世界規模で出てきています。
社会起業家というと、途上国での医療や教育の問題を解決する、というイメージもあるかもしれません。
そのような活動がメディアに取り上げられやすい、という側面もありますが、
日本人ならまず日本の問題を考えるべきでは?という意見もあると思います。
ですが、格差や貧困、それによる犯罪や貧困の再生産といった問題の原因は、世界規模で起こる経済のグローバル化ともいえるわけです。
ですから、問題の本質を探ってみれば、その原因は結果的に皆同じであることもあります。
そういう意味では、私たちは世界共通の課題を抱えているわけです。
とはいっても、実際には一人で世界中の問題を解決できるわけではないので、起業して活動する地域を選ばなければならないのですが、
要は大局的に問題を考える視点が必要ということです。
問題解決は根本から
社会問題の解決方法を模索する際は、その根本原因を探らなければなりません。
わかりやすい例を出すと、貧困を解決するためにお金や食料など寄付するのは
当然大切なことですが、いつかは自立し寄付に頼らなくてすむような状態を実現することが最重要でしょう。
難しいのは、相手のニーズと、社会課題の把握とそれに対するあなたの提案やサービスとが必ずしも一致しないという点です。
社会企業は社会問題の解決を一番の目的として活動しています。
ですが、サービスを受ける側とすれば、単純に寄付を受けることも必要としています。
もしかしたら、長い時間のかかりそうな貧困の原因の根本的な解決より、目の前の寄付のほうがありがたがられるかもしれません。
目標を見失わないように
目標と顧客のニーズが一致しなくても、やはり起業の目標は見失わないようにしなければなりません。
「いいこと」をすればいいというわけでもありません。
ニーズの把握だけでなく、社会課題の適切な把握やミッションの共有、それを実行するための計画や資金調達、リーダーシップなど企業のマネジメント力が求められます。
様々な能力が必要ですが、まずは自分のできることからコツコツはじめてみませんか。