起業と公益~NPO法人と一般社団法人を事例に~
2018年4月19日法人化
少し分かりにくく、誤解されやすい「
NPO法人」と「一般社団法人」についてお話し致します。
また、公益性という新しい起業の考え方についてもご紹介します。
今までの、起業への考え方が少し変わるかもしれませんよ。
公益とは
公益とは、状況によっても異なりますのでこれという定義はまだ難しいですが、
何となく、個人の私利や私益ではなく、広く住民・市民一般ためになるようなこと
というイメージはあるのではないでしょうか。
公益に資するという事業というと、教育や福祉、医療などの分野が思い浮かぶでしょう。
公共サービスでは対応しきれない、個別化した複雑なニーズがある現状、個人や企業が公益のことを考えて行動していくことが求められていいるわけです。
NPO、CSR、知っていますか?
こういったことは、公的な認証を受けたNPO法人やボランティア団体、宗教団体などが中心になって担ってきました。
NPO法人を設立して起業するケースも多いです。
しかし、そういった公益のため、簡単にいえば「世のため人のため」になることを、
一部の人たちだけで取り組むのではではいけない、という考えがあります。
また、CSR、企業の社会的責任という考え方が随分普及してきました。
企業の目的は利潤を上げることなのですが、それだけを目指していてはだめで、
企業市民として、地域や市民のために何かすべきという倫理的価値観のことを指します。
現状、各企業がどのような社会貢献活動をしているか、あまりクローズアップされておらず、あまり聞きなれない方もいるかと思います。
また、直接的に会社の利益につながることではないため、疎かにしている企業が多いのも現状です。
反面、外資系の企業は稼いだ分で社会に還元しようという考えが個人単位でも強く(歴史的な違いもありますので、特に欧米が優れているというわけでなく、事実判断として)、
寄付や社会貢献活動が盛んです。
日本に進出している外資系企業も積極的に日本でそういった活動を行っていますよね。
ソーシャル・ビジネスのようなビジネスを通じて社会問題を解決したいと思い、起業を考えている方は、既に考えているようなことだと思いますが、そうでない方も少し頭に入れておくと良いのではないでしょうか。
また、近年はSCRを重視する風潮もありますし、ビジネスモデルの強みの一つにするのもおすすめです、
公益と起業
これまで公益について書いてきました。
公益に資する事業で安定的な利益を出し続けられたり、起業して得た利益を寄付や投資といった形で還元することがよいことであるというのは、何となく共感できることなのかなと思います。
NPO法人
専ら公益事業を行う法人にNPO法人があります。
個人事業でも公益事業をすることができますが、公益事業として定められている分野に該当する事業を行うと、利益を挙げても税金がかかりません。
その分、継続するための資金としてくださいということです。
また、NPO法人は、1998年に創設されて20年以上の年月が経ち、団体数も増え「NPO法人=社会貢献の団体」というイメージも定着してきています。
一部では、「NPO」=ボランティアという誤解もあるのですが、NPO法人の名前自体を聞いたことがないという人は少ないかと思います。
その分、NPO法人を設立して起業すると、社会的な信頼は得やすいというメリットがあります。
また、独力で設立した場合、資本金ゼロ円で大丈夫ですし、認証手数料や登記費用もゼロで、設立に関して費用はほとんどかかりません。
ただ、主たる活動が20分野の活動に限られ、不特定多数の公益にあたる事業をしなければなりません。
一般社団法人
一般社団法人の場合、適法であれば、NPO法人とは違い、事業に制限なく公益目的でも共益目的でもどちらでも大丈夫です。
しかし、一般社団法人も誤解されてる点が多いのではないでしょうか。
①利益を出してはいけない
②給与や報酬をもらってはいけない
③無料もしくは格安でサービスを提供しなければならない。
という3つの点でよく誤解しているのを耳にします。
まずNPO法人と同様に、「利益を出してはいけない」ということではありません。
一般社団法人の「非営利」とは、事業で利益を出してはいけないということではなく、事業で利益を出してもかまわないが「分配(配当)してはいけない」ということなのです。
ちょっと難しくなりました。
株式会社の仕組みと比較した方が分かりやすいかと思います。
株式会社の場合は、売上から経費(給与等人件費も経費です)を差し引いて利益が出ると、それを出資者(株主)に配当という形で分配することができます。
つまり会社が儲かれば利益が配当されるので、株主は儲けることができるのです。
それを期待して出資します。
これを法律上「営利」と呼びます。
一般社団法人が「非営利」法人ということは、売上から経費(給与等人件費も経費です)を差し引いて利益が出ても、
出資者(正会員等)や寄付をして下さった方に分配することができません。
つまり配当金を出すことができないのです。
では、出た利益はどうするのか?
利益として余ったお金は、翌年度の活動のために繰越します。
「利益が出たら会員や社員に還元するのではなく、次年度以降にさらに活動を拡げていきましょう」というのが一般社団法人なのです。
ここでいう社員は会社の従業員とは違います。法人の方向性を決める議決権を持つ人のことです。
利益が出たら、次年度従業員の給料を増やすというのも十分ある選択肢です。
2つ目は、これはNPO法人と同様、もうけてはならないということではありません。
3つ目は無料もしくは格安でサービスを提供しなければいけない、という誤解です。
「非営利」という言葉は、「分配してはいけない」ということでしたね。
だから提供するサービスもきちんと有料にして、利益を出してもいいのです。
お金を稼ぐことは良い事
利益を出さなければスタッフに給料も出せず、活動を続けていく事ができません。
どれだけすばらしい活動であっても、参加してくれるスタッフや役員に「労働の対価」として人件費を渡せなければ、活動を大きくすることも長続きすることもできませんよね。
「お金を稼ぐ」ことに抵抗がある方もいるかもしれません。
詐欺師のように不良品やないものを売りつけて「お金を稼ぐ」のは確かに問題があります。
しかし、スタッフさんや役員さんにも生活があります。
しっかりとしたキャッシュポイントがなければ事業継続ができません。
あなたのお客様のためにも、正当な利益を出して、長続きする事業を行っていただきたいと思います。
公益事業を行う法人として、NPO法人と一般社団法人を簡単にご紹介しました。
しかし、法人の形態や事業内容いかんに関わらず、起業家として、一市民として、何か少し社会に還元できないか、
人の力に頼りすぎず、自分たちの問題を自分たちで何とかできないか、という視点を持ってみてください。