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コラム

雇用保険、本当に知っていますか?

2018年4月11日法務・手続き

    「雇用保険ってどんな保険?」 「細かくてめんどくさそう」 「起業と雇用保険て関係あるの?」 雇用保険とは、労働者が失業した際に受けられる保険であり、 また、失業の予防や雇用されるチャンスを増大させるために積み立てられるお金です。 労働者が安心して働き、たとえ失業してもすぐに社会復帰できるようにするための大切な保険です。

雇用保険の対象者

では、だれが雇用保険の対象となるのか、というと、厚生労働省の定義によれば、 「労働者を雇用する事業は、その業種、規模等を問わず、すべて適用事業」である、となっています。 つまり、一人でも従業員がいれば、必ず加入しなくてはならないのです。 では、週に10時間しか働かないようなアルバイトを雇っている場合でも加入しなければならないか、 というとそうではありません。 いくつかの基準を満たした労働者の場合は、加入しなけばならないのです。 加入していない場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる、 と定められています。 厚労省によると、パートタイマーの場合でも、次の両方の条件を満たす場合は加入しまければなりません。

雇用保険加入条件

(1) 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。

具体的には… ・期間の定めがなく雇用される場合 ・雇用期間が31日以上である場合 ・雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合 ・雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合(注) [(注) 当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、 31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。]

(2) 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。(厚労省HPより抜粋)

この二つの条件を満たす労働者がいる場合は、雇用保険に加入しなければなりません。(例外:農林水産業を営み、常時働く従業員が五人以下の場合は任意、ただし、従業員の2ぶんの1以上が加入を希望する場合は、適用条件を満たす全員を加入させなくてはならない) 所定労働時間というのは、就業規則などで定められているその人の勤務時間のことです。 もし、定められていない場合、平均をとって算出します。 なので、例えば、パートさんで、週で多くても15時間しか働いていない、という場合は 加入する必要はありません。 あるいは、週五日・一日八時間働いてもらおうと考えているが。 7月1日〜7月15日までしか雇用しない場合、加入する必要はありません。 また、季節的に雇用される従業員に関しても、 加入しなくてよい条件があります。 それは、 「4か月以内の期間を定めて雇用される者」 「1週間の所定労働時間が30時間未満の者」(厚労省HPより) です。これら両方に該当する場合は、加入しなくてもだいじょうぶです。

65歳以上は…?

また、65歳以上の方の雇用保険に関しては平成29年1月より変更があります。 従来は、同じ会社で働き続けた場合のみ、65歳に達した日以降も、 「高年齢継続被保険者」として、雇用保険の適用対象となっていました。 しかし、平成29年以降は、65歳以上の方への雇用保険の適用条件が緩くなります。 65歳以上の方を新たに会社に雇い入れた場合も、加入対象となります。(ただし、実際の保険料の徴収は、平成31年度分まで免除) 少子高齢化と人手不足が進む社会情勢と、一度現役からは引退したけれど、まだまだ元気に働くことができる、という方が多くなってきたという現状を踏まえて、 そのような方々に安心して積極的に働いてもらおう、という意図があるのでしょう。

試用期間は…?

そして、試用期間中だから、雇用保険には加入しない、といったことをよく聞きますが、 雇用関係が存在し、条件を満たすのならば加入しなければなりません。 正規雇用だから、試用期間だから、という問題ではありません。 例えば、あなたがあるコンサルタント会社を経営する経営者で、 最近忙しくなってきたので、ある20代後半の男性を従業員として雇い、初めの3か月は試用期間としたとしましょう。 しかし、今まで新たに人を採用したことがなかったし、 採用時にやらなければならない複雑な保険のことはとりあえず後回しに、と考えます。 それに、すぐ辞められるかもしれないし、彼はコンサル経験がないからどれだけできる人かもわからない。 だから、試用期間の間は面倒だし保険はいいか、と考えたとしても、事業主には加入義務があります。 彼が経営者の業務命令に基づいて仕事をし、その対価として給与をもらう、という関係が生じている以上、正社員だろうがバイトだろうが試用期間だろうが、雇用関係にあるのです。 そして、試用期間を3か月と定めた時点で、その後本採用に至らなかったとしても、 「雇用期間が31日以上」という条件に当てはまっています。 また、仮に試用期間が30日であったとしても、そもそも「試用期間」 と定めた時点で、その人が優秀であれば30日を超えて雇う意思があるという ことになるので、加入義務が生じます。 他の条件として、「一週間の所定労働時間が20時間以上である」というものがありますが、 これも学生のアルバイトかパートタイマーでない限り、当てはまることの多い条件でしょう。 週5日働いたとしたら、1日の所定労働時間が4時間以下でなければこの条件を満たしてしまいます。 従業員が複数の会社で勤務している場合は、生計を立てるための主な収入源となっている会社で加入します。

実際に従業員を雇ったらすること

加入条件を満たす労働者を新たに雇った場合、事業主はそのことをハローワークに届け出て、 いくつかの手続きをしなければなりません。 (詳しくは、厚労省のHPをご覧ください。) また、事業主がその手続きを行わない場合、労働者が自らが、 雇用保険に加入する条件にあるかどうかを、ハローワークを通じて確認することができます。 短期で限定的に雇い入れる場合や、労働時間が極端に少ない場合などの一部の例外 を除いて、従業員を雇ったら雇用保険への加入義務が生じることになります。 起業家にとって保険のことは優先事項ではないかもしれませんが、 雇用が発生した場合などには必要になってきます。 今すぐ必要なことではなくても、ぜひ頭に入れておいて頂きたいと思います。

まとめ

雇用保険とは…労働者が失業した際、あるいは再就職までの道のりを助ける保険 加入条件…農林水産業を営む一部の事業主などの例外を除いて、 一人でも従業員がいれば加入しなければならない。

雇用保険と助成金

最後に、助成金に関連するお話をします。 突然助成金の話と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、助成金と雇用保険は深い関係があります。 実は、たくさんある助成金の税源は、会社が払っている雇用保険料が使われているのです。 労働市場を活性化や、職場環境の改善、従業員の能力アップにつなげようという目的があるので、 雇用保険料が充てられているのです。 ですので、あなたの会社が助成金を申請するためには、雇用保険に加入していなければなりません。 助成金は、書類の作成などに多少の手間はかかりますが、 他社との競争などもなく、規定の条件さえ満たせばもらえるものです。

助成金を活用しよう

うまく活用すれば、お金をもらえる上会社の成長につなげられます。 毎月雇用保険料を払うのが負担に感じるかもしれませんが、 会社の成長につながれば、雇用保険の負担以上の価値があなたの会社に還元されます。 逆にいえば、きちんと雇用保険を支払っているなら、助成金を活用しないと損してしまうのです。 助成金の財源の一部はあなたの会社が払っているのですから、 助成金をもらうことはずるいことでも何でもないですし、むしろ積極的に活用して いくべきなのです。 助成金を活用している会社は全体の1割程度といわれています。 雇用保険という形で財源に協力しているのに、約9割の会社は助成金を利用していないのです。 助成金は数が多く専門用語も多いので、面倒に感じるかもしれませんが、 数が多い分あなたの会社に合う助成金も見つかる可能性が高いです。 ですので、「法律で決められているから」、「従業員の福利厚生のため」だけでなく、 助成金制度を上手く利用して会社の成長に還元するためにも、雇用保険加入は大切なのです
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